HYBRID W-ZERO3雑感
W-ZERO3シリーズ最新機種「HYBRID W-ZERO3」(以下ハイゼロ)が発表されました。


僕は、はじめて契約した移動電話がDDIポケットのPHSで、以来10年そのPHS回線をメインで使用し、電話番号は住民票にまで登録してしまっています。
そして今使っている電話機がWILLCOM 03というバリバリのWILLCOM/W-ZERO3ユーザーなので、このところ暗いニュースばかりだったWILLCOMが久しぶりに打ち上げてくれたデカい花火に感激しきりってとこです。
また、W-ZERO3シリーズを携帯電話として使ってきた自分にとって、欲しいのは「スマートフォンベースのガラケーもどき」。iPhoneもどきのスレート端末がブームの今、よくぞ縦スライドテンキースタイルを採用してくれたと拍手を送りたいところです。

W-CDMA内蔵でSIMロックフリー、無線LANルータ機能つきで、メールはWindows Liveのものが使えるなど、まるでWILLCOM終了を視野に入れたユーザー救済策とも見える機能が満載ですが…


ハイゼロのW-CDMA搭載については、おそらくWILCOM社内でも賛否をめぐって猛烈に紛糾したことと思います。
それでも結局搭載に至ったのは、「My Phone」「Windows Marketplace」といったWindows Liveのクラウドサービスに対応させるためにはスマートフォン向けOSのWindows Mobile 6.5「Professional」を採用する必要があり、そのために3G通信機能を本体に内蔵する必要があった、ということが大きそうです。
(「My Phone」「Windows Marketplace」連携は、スマートフォン向けの「Professional」「Standard」エディションのみ対応)
…と思っていたら、対応するようですね
http://blog.willcomnews.com/?eid=996740

これまでW-ZERO3シリーズは一貫して、Windows Mobileの中でも「Classic」エディションという、素のPDA向けOSを採用してきました。
それは、Windows MobileがPHS+W-SIMという独自規格に対応しないという理由もあったかも知れませんが、対応してもらわなくても素のPDAにW-SIMスロットを追加すればスマートフォンが出来る、というWILLCOMからのメーカー向けアピールの側面もあったはずです。
実際W-ZERO3シリーズは、ハード的には「素のPDA+PHS通信カード」と変わらないシステム構成でありながら、オンラインサインアップでメールアドレスを取得でき、プッシュメールを受信できるなど、他社のスマートフォン以上に「電話っぽく」使える機種でした。
しかしClassicエディションであるために、せっかくWILLCOM 03でBluetoothを内蔵しても使えるスタックが限られていてヘッドセットやダイアルアップが利用できないなど、スマートフォン向けOSでないことの限界が徐々に見え始めてもいました。

そこへ、iPhoneショックに触発されたMicrosoftのクラウドシフト。
MicrosoftはWindows Liveのクラウドサービスとその受け皿となるスマートフォンによるエコノミーを構想し、そこからClassicエディションははじき出されてしまったわけです。
似た機能を追加ソフトで独自に実現する手もあるでしょうが、今後発売されるWMベースのスマートフォンがすべてMy PhoneやMarketplaceに標準対応してくることを思えば、オリジナルソリューションを用意してもガラパゴス化は必至。他社スマートフォンに見劣りすることは避けられないでしょう。

WILLCOMの中の人たちには、DDIポケット時代にPHSが「子供のオモチャ」「携帯電話の簡易版」と見られたことへのルサンチマンが相当に根強いらしく、それだけにフラッグシップ機であるW-ZERO3シリーズは他社ケータイのユーザーがうらやましがるようなモノであることを求められてきたフシがあります。
「PHSは所詮こんなもん」と思わせないために、自社規格にこだわらずオープン標準を進んで取り入れ、包含していく。H"-LINKからAIR-H" PHONEへと移行したときと似た判断が下されたのではないでしょうか。

Microsoftが顧客囲い込みのために用意したソリューションをオープン標準というのも変ですが、インフラや法令の縛りで国境を超えがたい通信キャリアと違っていきなり世界展開を目指せるメーカー主導のソリューションは、キャリアの壁を越えたユニバーサルサービスとなる可能性があります。
だからこそ、W-ZERO3シリーズ伝統のOperaやW-ZERO3メールを棄て、プライドも棄てて3G搭載に踏み切り、Windows Liveの専用ボタンを設けて積極対応した。Windows Liveメールをプッシュで受信できるといった独自の仕組みもあるようですが、基本的にサービスプロバイダとしての役割はWindows Liveに明け渡すつもりなのでしょう。
ハイゼロに対しては、WILLCOMはW-SIMで通信機能を提供する「土管屋」に徹しようとしているように見えます。


2系統あるSIMカードスロットはどちらもロックフリーらしいですが、本体内蔵W-CDMAは音声通話が出来ず、データ通信専用とのこと。
もう一方はW-SIMに繋がっており、同時発表のGSM W-SIM用のSIMはこちらを利用するようになっているということは、W-CDMAのW-SIMが開発されればW-CDMAでの音声通話も可能になるのでしょう。
おそらくWILLCOMの狙いはW-SIMのプラットフォーム化で、ハイゼロはその呼び水と位置づけているのだと思います。もちろんシャープには端末を海外に売り込めるチャンスがあり、MicrosoftはWindows PhoneとWindows Liveの利用者を増やせるメリットがある。初代W-ZERO3のリリース時に繰り返し言われた水平分業スタイルの2010年版というわけです。
極論、W-SIMで通信機能が端末から切り離され、情報サービスをメーカーやサードベンダーの側が提供するようになれば、キャリア同士の競争は通信方式と料金体系に収斂される。全キャリアを「土管」化し、土管屋どうしの泥仕合に持ち込むことがハイゼロに課せられた真の使命なのかもしれません。だとしたら気の長い話ですが…


ニュースリリース
http://www.willcom-inc.com/ja/corporate/press/2009/11/11/index_02.html

製品サイト
http://www.willcom-inc.com/ja/lineup/ws/027sh/index.html

写真で解説する「HYBRID W-ZERO3」 - ITmedia D モバイル
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0911/12/news032.html

速報:ウィルコム HYBRID W-ZERO3発表、PHSとW-CDMA 両対応
http://japanese.engadget.com/2009/11/11/hybrid-w-zero3/

化け物ケータイ? HYBRID W-ZERO3 - 週刊アスキー
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/013/13617/

ウィルコムがPHSと3.5G両対応のW-ZERO3,3.5GはSIMロックフリー - ニュース:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20091111/340371/

ASCII.jp:HYBRID W-ZERO3をちょっとだけ触った
http://ascii.jp/elem/000/000/475/475863/

今のウィルコムだから作れた大胆すぎるスマートフォン「HYBRID W-ZERO3」 モバイル-最新ニュース:IT-PLUS
http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMIT0f001011112009

ウィルコムの新スマートフォン「HYBRID W-ZERO3」を香港で試した モバイル-最新ニュース:IT-PLUS
http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMIT0f000019112009

Posted : 2009/11/19 10:54:05

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