上関町長選への感想
上関町長に原発推進派の柏原氏が3選され、全国ニュースになりました。

上関町長に原発推進派柏原氏



 山口県上関町長選は25日、投開票され、同町への原発建設計画の推進派が推す無所属現職の柏原重海氏(62)が、計画に反対する無所属新人の山戸貞夫氏(61)を大差で破り、3選を果たした。福島第1原発事故を受け町民の選択が全国的にも注目される中、建設推進の立場を維持し、国の方針決定を待つと訴えた柏原氏が続投を決めた。

 福島の事故後、原発の新規立地計画がある自治体の首長選は初めて。推進派町長の当選は、国の原子力政策に影響を与える可能性をはらんでいる。

 柏原氏は「住民の団結」を訴えた。原発建設に伴う国からの交付金について「匹敵する町づくりの財源はない」とする一方、野田佳彦首相が「原発新設は困難」と表明したことなどを踏まえ、先行きの不透明さを指摘。町の行財政改革をさらに進める意欲を示すなど、原発が建設されない場合に備える姿勢もにじませた。

 山戸氏は「原発阻止」を貫いた。福島の被害を踏まえ、「金のため、命や生活を犠牲にできない」と強調。自然エネルギー普及などを軸に町の自立を訴えたが及ばなかった。

 当日有権者数は3206人。投票率は過去最低の87・55%(前回88・08%)だった。中国電力による原発建設構想が1982年に浮上後、町長選は9回目。全て推進派が勝っている。山戸氏の得票率は33%を切り、反対派としては過去最低だった。
この件に関して、また原発推進の是非に関して、正直僕はハッキリした意見を持っていません。
ただ、2010年11月ごろ「上関原電立地促進協議会」のビラ制作に関わったことがあり、そこでの推進派の主張はこんな内容。

●上関原発の開発工事は反対派の妨害活動により中断した状態にある
●山口地裁が妨害行為を禁ずる決定を出したのになお続いている
●妨害行為の実行部隊は反対派住民ではなく県外から集まってくるプロ活動家であり、必ずしも地元民の意思を反映していない
●活動家の不法行為でいち私企業の営利活動が妨害されている現状を理解してほしい

その後の福島原発事故で上関原発開発は絶望的になったかと思いきや、中国電力は上関原発開発の続行を早い時期から表明しています。(現在、準備工事は一時中断中

「原発=悪」「脱原発は既定路線」という空気の中かなり無理めの突っ張りに思えましたが、今にして思えば推進派住民からのプッシュもあったのかもしれません。


選挙結果からわかるのは「反対派住民は、存在するが多数派ではなかった」ということであり、促進協の主張する「反対派の活動は必ずしも地元民の意思を反映していない」という言い分にも一定の説得力があります。

気になるのは、開発の是非そのものと別な次元で、開発をめぐる争いがイデオロギーの代理闘争にされ、当事者でない外部の人間の声が大きくなっている構図。
「崖の上のポニョ」の舞台のモデルとして有名になった福山市・鞆の浦の架橋問題に関して、宮崎駿や大林宣彦らが街並み保存基金への協力という形で反対を表明して話題になったのと同様の構図です。

原発はともかく、鞆の浦の件のように、住んでもいない土地に対して「古くからの景観を残せ」などと主張するのは、あの人達が嫌いであろう「都会人の醜悪なエゴ」そのものだと個人的には思いますけどね。


もうひとつ思うのは、上関町で推進派町長が再選されたのに対し、上関町から近い光市・岩国市は原発開発に強硬に反対しているということの意味。

光市の人口は約54000人・岩国市約140000人に対して、上関町は約3500人でしかありません。
その上関町で3選を果たした柏原氏は「原発建設に伴う国からの交付金について「匹敵する町づくりの財源はない」とする」と主張している。
人口減少社会の綻びは、こういう場所から顕れてくるのだなということです。

Posted : 2011/09/26 12:15:29

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